ねこ観察ノート

猫と暮らして分かったことを、出典つきで

猫から人にうつる病気にはどんなものがあるか — 厚生労働省・国立健康危機管理研究機構の資料で確認する

2026-09-08NEW約6分で読めます#人獣共通感染症#猫の健康#トキソプラズマ症#猫ひっかき病

パスツレラ症、猫ひっかき病、カプノサイトファーガ感染症、トキソプラズマ症について、感染経路と予防法を公的機関の情報にもとづいて整理します。

結論
猫からうつる病気は大きく「かみ傷・ひっかき傷」経由と「糞便」経由の2系統。手洗いと爪切り、猫用トイレの毎日の清掃で大半は防げる。妊娠を理由に猫を手放す必要はない。

猫を飼っていると、噛まれたり引っかかれたりすることは珍しくありません。
その傷から人にうつる病気があることは知っていても、
「具体的に何が」「どういう経路で」うつるのかを知らない飼い主は多いはずです。

ここでは、厚生労働省・国立健康危機管理研究機構(JIHS)・厚労省検疫所(FORTH)・
東京都保健医療局が公表している情報から、猫が関わる主な感染症を整理します。
症状の重さや治療の要否は個人差が大きいため、断定的な判断はせず、
気になる症状があれば医療機関に相談してください。

そもそも猫から人にうつる病気にはどんなものがあるのか

まず全体像をつかむ。東京都保健医療局は、猫が関わる共通感染症として
パスツレラ症・猫ひっかき病・カプノサイトファーガ感染症・トキソプラズマ症など
10種類前後を挙げている。このうち発生数や情報の蓄積が多いものを取り上げる。

病名主な感染経路人の主な症状
パスツレラ症かみ傷・ひっかき傷数時間で傷口が腫れて痛む
猫ひっかき病(バルトネラ症)ひっかき傷・かみ傷、ノミに刺されるリンパ節の腫れ、発熱、だるさ
カプノサイトファーガ感染症かみ傷・ひっかき傷、傷口をなめられる発熱、倦怠感、まれに敗血症
トキソプラズマ症猫の糞便中の原虫、加熱不十分な食肉多くは無症状。妊娠中の初感染は胎児に影響
ポイント
どれも「猫が悪いから起きる」病気ではない。健康な猫の口の中やお腹にもともといる菌・原虫が、傷や糞便を通じてたまたま人に渡ることで起きる。
猫からうつる感染症は、かみ傷・ひっかき傷経由と糞便経由の2系統に分かれる かみ傷・ひっかき傷 傷口から感染 パスツレラ症・猫ひっかき病・カプノサイトファーガ感染症 糞便(トイレ) 経口摂取 トキソプラズマ症
猫からうつる病気、2つの経路

かみ傷・ひっかき傷からうつる病気とは

噛まれたり引っかかれたりした直後の対応が、重症化を防ぐ分かれ目になる。

東京都保健医療局の資料によると、パスツレラ症は「かみ傷、引っかき傷」から感染し、
「傷口が腫れて痛む」症状が出る。猫は多くの場合、目立った症状を示さないまま
菌を持っている。

猫ひっかき病はバルトネラ菌による感染症で、厚労省検疫所(FORTH)の解説では
「感染した猫に引っ掻かれたり、その血を吸ったノミから刺されてうつる」とされる。
症状は発熱・筋肉痛・頭痛で、菌が入った部位にできものや膿がたまることもあり、
まれに重症化する。

注意
噛まれた・引っかかれた場所が赤く腫れる、熱を持つ、発熱が続く、といった様子があれば自己判断せず医療機関を受診する。特に免疫が落ちている人は重症化しやすいとされる。

見た目が健康な猫でもうつることはあるのか

「うちの猫は元気だから大丈夫」とは言い切れないのが、カプノサイトファーガ感染症の特徴。

厚生労働省の解説ページによると、この感染症は犬や猫の口の中に常在する
3種類の細菌が原因で、国内データでは猫の
「57~64%がC. canimorsusを保菌しており、84~86%がC. cynodegmiを保菌している」。
健康な猫でも症状を示さないまま菌を持っていることが多い。

菌の種類猫の保菌率(国内データ)
C. canimorsus57~64%
C. cynodegmi84~86%

感染経路はかみ傷・ひっかき傷のほか、傷口を猫になめられることでも起こる。
潜伏期間は1~14日(多くは1~5日)で、発熱・倦怠感・腹痛・吐き気・頭痛などの
前駆症状のあと、まれに敗血症や多臓器不全に進むことがある。人から人へ
感染した報告はない。

厚生労働省が挙げる予防法は次のとおり。

妊娠中は猫を手放すべきなのか

結論から言うと、国立健康危機管理研究機構(JIHS)の資料は
「妊娠を理由に飼い猫を処分する必要はない」と明記している。

トキソプラズマ症は原虫(トキソプラズマ)による感染症で、猫が終宿主にあたる。
JIHSの解説によると、感染経路は大きく2つ。加熱不十分な食肉に含まれる
組織シストを食べること、そして猫の糞便に含まれるオーシストを口にすること。
豚肉が従来重視されてきたが、水や土壌を介した感染事例も報告されている。

ポイント
感染した猫がオーシストを排出するのは「初感染後数日からおよそ2週間まで」の限られた期間だけ。しかも猫のトイレを毎日、24時間以内に片付ければ、糞便中のオーシストが感染力を持つ前に処理できるとされる。
猫が排出したオーシストは数日で感染力を持つため、24時間以内の掃除で感染力を持つ前に処理できる 排出 24時間以内に掃除 数日後:感染力を持つ 約2週間で排出終了
猫のトイレ掃除が予防になる理由

なお、健康な成人がトキソプラズマに初めて感染しても、多くは無症状か
軽い発熱・リンパ節の腫れ程度で済むとされる。問題になるのは、
妊娠中に初めて感染した場合で、まれに胎盤を通じて胎児に感染し、
水頭症や脳内の石灰化などにつながることがある、とJIHSの資料は説明している。

JIHSが挙げる予防のポイントは次のとおり。

豆知識
猫ひっかき病はノミを介しても感染しうるとFORTHの資料は指摘している。定期的なノミ予防は、ひっかき傷そのものを減らすことよりも先に効く対策かもしれない。

日常でできる予防のポイントは何か

ここまでの内容は、特別なことをしなくても実践できる範囲に収まる。

タイミングすること
猫と遊んだあと手を洗う。傷があれば石けんと流水で洗う
噛まれた・引っかかれたときすぐに傷口を洗う。腫れや発熱が出たら受診する
猫のトイレ毎日、できれば24時間以内に片付ける
猫に傷をなめさせたいときなめさせない。特に開いた傷は避ける
野良猫と接するとき過度な接触を避け、触れたら手を洗う

いずれの病気も、飼い猫を遠ざけることで防ぐものではなく、
接し方と衛生管理で防ぐものだという点は共通している。
症状の心配がある場合は、自己判断で様子を見ず医療機関に相談してほしい。

出典


← 記事一覧へ戻る

この記事はいかがでしたか?

よろしければ、いいねをお願いします。

感想を送る

お名前もメールアドレスもうかがいません。いただいた内容は運営者だけが読みます。個別のお返事はできません。

SNSでシェアして教えていただくこともできます。