
猫から人にうつる病気にはどんなものがあるか — 厚生労働省・国立健康危機管理研究機構の資料で確認する
パスツレラ症、猫ひっかき病、カプノサイトファーガ感染症、トキソプラズマ症について、感染経路と予防法を公的機関の情報にもとづいて整理します。
猫を飼っていると、噛まれたり引っかかれたりすることは珍しくありません。
その傷から人にうつる病気があることは知っていても、
「具体的に何が」「どういう経路で」うつるのかを知らない飼い主は多いはずです。
ここでは、厚生労働省・国立健康危機管理研究機構(JIHS)・厚労省検疫所(FORTH)・
東京都保健医療局が公表している情報から、猫が関わる主な感染症を整理します。
症状の重さや治療の要否は個人差が大きいため、断定的な判断はせず、
気になる症状があれば医療機関に相談してください。
そもそも猫から人にうつる病気にはどんなものがあるのか
まず全体像をつかむ。東京都保健医療局は、猫が関わる共通感染症として
パスツレラ症・猫ひっかき病・カプノサイトファーガ感染症・トキソプラズマ症など
10種類前後を挙げている。このうち発生数や情報の蓄積が多いものを取り上げる。
| 病名 | 主な感染経路 | 人の主な症状 |
|---|---|---|
| パスツレラ症 | かみ傷・ひっかき傷 | 数時間で傷口が腫れて痛む |
| 猫ひっかき病(バルトネラ症) | ひっかき傷・かみ傷、ノミに刺される | リンパ節の腫れ、発熱、だるさ |
| カプノサイトファーガ感染症 | かみ傷・ひっかき傷、傷口をなめられる | 発熱、倦怠感、まれに敗血症 |
| トキソプラズマ症 | 猫の糞便中の原虫、加熱不十分な食肉 | 多くは無症状。妊娠中の初感染は胎児に影響 |
かみ傷・ひっかき傷からうつる病気とは
噛まれたり引っかかれたりした直後の対応が、重症化を防ぐ分かれ目になる。
東京都保健医療局の資料によると、パスツレラ症は「かみ傷、引っかき傷」から感染し、
「傷口が腫れて痛む」症状が出る。猫は多くの場合、目立った症状を示さないまま
菌を持っている。
猫ひっかき病はバルトネラ菌による感染症で、厚労省検疫所(FORTH)の解説では
「感染した猫に引っ掻かれたり、その血を吸ったノミから刺されてうつる」とされる。
症状は発熱・筋肉痛・頭痛で、菌が入った部位にできものや膿がたまることもあり、
まれに重症化する。
見た目が健康な猫でもうつることはあるのか
「うちの猫は元気だから大丈夫」とは言い切れないのが、カプノサイトファーガ感染症の特徴。
厚生労働省の解説ページによると、この感染症は犬や猫の口の中に常在する
3種類の細菌が原因で、国内データでは猫の
「57~64%がC. canimorsusを保菌しており、84~86%がC. cynodegmiを保菌している」。
健康な猫でも症状を示さないまま菌を持っていることが多い。
| 菌の種類 | 猫の保菌率(国内データ) |
|---|---|
| C. canimorsus | 57~64% |
| C. cynodegmi | 84~86% |
感染経路はかみ傷・ひっかき傷のほか、傷口を猫になめられることでも起こる。
潜伏期間は1~14日(多くは1~5日)で、発熱・倦怠感・腹痛・吐き気・頭痛などの
前駆症状のあと、まれに敗血症や多臓器不全に進むことがある。人から人へ
感染した報告はない。
厚生労働省が挙げる予防法は次のとおり。
- 動物との過度な接触を避ける
- 動物と触れ合ったあとは手を洗う
- 咬傷・ひっかき傷は石けんと流水でしっかり洗う
- 傷口を猫になめさせない
妊娠中は猫を手放すべきなのか
結論から言うと、国立健康危機管理研究機構(JIHS)の資料は
「妊娠を理由に飼い猫を処分する必要はない」と明記している。
トキソプラズマ症は原虫(トキソプラズマ)による感染症で、猫が終宿主にあたる。
JIHSの解説によると、感染経路は大きく2つ。加熱不十分な食肉に含まれる
組織シストを食べること、そして猫の糞便に含まれるオーシストを口にすること。
豚肉が従来重視されてきたが、水や土壌を介した感染事例も報告されている。
なお、健康な成人がトキソプラズマに初めて感染しても、多くは無症状か
軽い発熱・リンパ節の腫れ程度で済むとされる。問題になるのは、
妊娠中に初めて感染した場合で、まれに胎盤を通じて胎児に感染し、
水頭症や脳内の石灰化などにつながることがある、とJIHSの資料は説明している。
JIHSが挙げる予防のポイントは次のとおり。
- 食肉は中心部が67℃に達するまで加熱するか、-12℃まで凍結する(電子レンジでの加熱は不十分)
- ガーデニングや土いじりのあとは手を洗う。生水は飲まない
- 猫のトイレは妊婦以外が毎日片付け、容器はときどき熱湯消毒する
日常でできる予防のポイントは何か
ここまでの内容は、特別なことをしなくても実践できる範囲に収まる。
| タイミング | すること |
|---|---|
| 猫と遊んだあと | 手を洗う。傷があれば石けんと流水で洗う |
| 噛まれた・引っかかれたとき | すぐに傷口を洗う。腫れや発熱が出たら受診する |
| 猫のトイレ | 毎日、できれば24時間以内に片付ける |
| 猫に傷をなめさせたいとき | なめさせない。特に開いた傷は避ける |
| 野良猫と接するとき | 過度な接触を避け、触れたら手を洗う |
いずれの病気も、飼い猫を遠ざけることで防ぐものではなく、
接し方と衛生管理で防ぐものだという点は共通している。
症状の心配がある場合は、自己判断で様子を見ず医療機関に相談してほしい。
出典
- カプノサイトファーガ感染症に関するQ&A|厚生労働省
- トキソプラズマ症(詳細版)|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト
- バルトネラ菌関連疾患(Bartonella Associated Infections)|厚生労働省検疫所 FORTH
- 人と動物との共通感染症一覧|東京都動物愛護相談センター(東京都保健医療局)
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