ねこ観察ノート

猫と暮らして分かったことを、出典つきで

犬猫の殺処分数はなぜここまで減ったのか — 環境省統計20年分で確認する

2026-09-03NEW約5分で読めます#殺処分#環境省#統計#動物愛護

環境省が公表している犬・猫の引取り及び処分の統計をもとに、平成16年度から令和6年度までの殺処分数の推移を確認しました。減った理由と、いまも残る課題を出典つきで整理します。

結論
令和6年度の犬猫の殺処分数は6,830頭で、平成16年度(394,799頭)の2%以下まで減りました。ただし引取り自体がゼロになったわけではなく、いまも猫の引取り数は犬の1.3倍近くあります。

そもそも「殺処分数」とは何を数えた数字なのか

「殺処分数」は、都道府県・指定都市・中核市が引き取ったり収容したりした犬猫のうち、新しい飼い主に譲渡されず、元の飼い主にも返還されなかった数を指します。

環境省の統計ページによると、都道府県等は「所有者からの引取り」と「所有者不明の犬猫の収容(拾得など)」の両方を受け付けています。受け入れたあとの流れは、大きく分けて3つです。

収容された犬猫は、返還・譲渡・殺処分のいずれかに至る 引取り・収容 元の飼い主へ返還 新しい飼い主へ譲渡 殺処分
犬猫が引き取られてから先の3つの道
ポイント
「殺処分数」は引取り数そのものではありません。同じ年度でも、返還・譲渡がうまくいけば殺処分数は減ります。逆に言えば、引取り数と殺処分数の両方を見ないと実態はつかめません。

20年間でどれだけ減ったのか — 環境省統計を確認する

環境省が公表している「犬・猫の引取り及び処分の状況」には、平成16年度から令和6年度までの返還・譲渡数と殺処分数が年度別に載っています。主な年度を抜き出すと、次のとおりです。

年度返還・譲渡数(合計)殺処分数(合計)殺処分数のうち犬殺処分数のうち猫
平成16年度29,323394,799155,870238,929
平成21年度43,565229,83264,061165,771
平成26年度50,217101,33821,59379,745
令和元年度53,06232,7425,63527,107
令和3年度44,63014,4572,73911,718
令和5年度35,7649,0172,1186,899
令和6年度32,5066,8301,9644,866

殺処分数は平成16年度から令和6年度までの20年間で、約98.3%減りました。特に平成21年度から令和元年度にかけての10年間で7分の1近くまで下がっており、減少のペースが速い時期だったことが分かります。

注意
表の「返還・譲渡数」も同じ期間で減っています。これは殺処分が減った分だけ譲渡が増えたわけではなく、そもそもの引取り数自体が減ってきていることも影響しています。殺処分数の減少だけを見て「譲渡が進んだ」と単純化しない方がよい数字です。

猫は今も犬より多く引き取られている

犬と猫を分けて見ると、減り方に差があります。令和6年度の殺処分数は、犬1,964頭に対して猫4,866頭で、猫は犬の約2.5倍です。

環境省の同じ統計ページによると、令和6年度の引取り数は犬17,399頭・猫22,010頭でした。令和3年度は犬24,102頭・猫34,805頭で、こちらも猫の方が多くなっています。

年度犬の引取り数猫の引取り数
令和3年度24,10234,805
令和4年度22,39230,401
令和5年度19,35225,224
令和6年度17,39922,010

猫の引取り数が犬より多い状態は、少なくともこの4年間続いています。犬は登録・鑑札制度があり飼い主が特定しやすいのに対し、猫は屋外で暮らす個体や、所有者がはっきりしないまま生まれる個体が多いことが背景にあると考えられますが、この点についての環境省側の詳しい分析は今回確認できませんでした。

なぜここまで減ってきたのか

環境省が平成18年(2006年)に出した通知「犬及びねこの引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置について」には、都道府県等の窓口に対する助言義務が定められています。

その通知には、次のような趣旨が書かれています。

終生飼養、みだりな繁殖の防止等の所有者又は占有者の責任の徹底を図る観点から、引取りを求める事由、頻度及び頭数に応じて、飼養の継続及び生殖を不能にする不妊又は去勢その他の措置に関する必要な助言に努めること。

つまり、飼い主から引取りを求められた窓口は、ただ引き取るのではなく、「最後まで飼えないか」「不妊・去勢はできないか」を助言するよう求められています。

豆知識
この通知は引取りそのものを拒否できると定めたものではありません。あくまで「助言に努める」という努力義務です。それでも、窓口でのこうしたやり取りの積み重ねが、引取りを申し出る前に飼い主が思いとどまる一因になってきたとみられます。

これに加えて、都道府県・市町村ごとの譲渡ボランティアとの連携や、地域猫活動のような繁殖抑制の取り組みが各地で広がってきたことも、引取り数そのものを減らす方向に働いてきたと考えられます。ただし、この因果関係を定量的に裏づける環境省の資料までは、今回確認できていません。

窓口での助言、不妊去勢、地域猫活動の3つが、引取り数の減少という同じ方向に働く 窓口での助言 不妊・去勢の普及 地域猫活動 引取りを求める前に 思いとどまる
引取り数を減らす方向に働く3つの動き

都道府県ごとの数字はどこで見られるのか

ここまでの数字は全国合計です。地域によって引取り数や殺処分数には差があり、環境省の統計ページからは都道府県・指定都市・中核市別のPDF資料にもたどり着けます。

お住まいの自治体の数字が気になる場合は、環境省の統計ページに掲載されているリンクから、自治体別の資料を直接確認することをおすすめします。全国の合計だけでは、地域ごとの取り組みの違いは見えてきません。

結論
20年間で殺処分数は大きく減りましたが、ゼロにはなっていません。特に猫は引取り数・殺処分数ともに犬を上回る状態が続いています。不妊・去勢手術や、最後まで飼う覚悟を持つことは、統計の外側にいる一人ひとりにできる形で、この数字に関わっています。

出典


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